今井むつみ氏の「動詞の習得:即時マッピング」研究を聞く

 午後から研究会に出席。Nちゃんを保育園に預けて、午前中にボサボサ頭をさっぱりさせてから。やはりクリクリとカールしてしまうので。
 久々の土曜研。研究領域は違うのだが、修士時代にいくつか著書や論文を読んでいて、「こんな第一人者の話を聞けるのって、チャンス」と思って。
佐治伸郎先生・今井むつみ先生(慶応義塾大学)
「語意獲得とは何を意味するのか:即時マッピングと意味の再編成」

言語発達の諸研究では「語意獲得」という用語が漠然と使われている。多くの文献では子どもがあることばを理解したり、産出したりした時点でそのことばを「獲得した」としている。いわゆる「名詞・動詞論争」も、子どもが言語学習の初期の段階で、どのくらいの数の名詞、動詞を知っているか、というデータを基に議論されている。しかし、語意発達初期で、子どもがことばをある状況で「使うことができる」ことは子どもが大人と同じようにそのことばの意味を理解しているわけではない。本研究では、動詞語意の発達について、即時マッピングで得られる語意がどのような性質のものなのか、即時マッピング後、大人の語意を獲得するまでにどのくらいの時間がかかり、どのような過程を経るのかを議論する。また、子どもが母語で意味の再編成をし、語意獲得をする過程と成人L2学習者がL2で語意学習をする過程を比較し、L2語意学習への示唆を考察する。
 理論的な整理をして、これまでの「論争」を批判、そして仮説を構築し、検証に耐えうる緻密な実験計画へ。やはり心理学分野の研究は、この過程が非常にクリアであり、だからこそ、海外のメジャーな学術誌で査読者と“討論”できるのだ。そして、反論に対し、反駁するために、再度実験を練り直せる。こういうこじんまりした研究会(研究討論会)では、そのような裏話も聞けるので、非常に面白い。
 L2学習に関し言及した佐治氏に対し、質問すればよかったかな、と後悔。SLA(第二言語習得)研究とはスタンスが違うので、その辺り擦り合わせしてみたかったかな。(←って、そんなにSLAが詳しいわけじゃないけど・・・苦笑)。
 内田伸子先生のコメントからも面白い情報を入手。日・中・米の母親(養育者という意味)から子どもへの語りかけ、「日本人はtuneしている」と。中・米では、1才前には幼児語による語りかけから脱し、大人に対するのと同じ言葉を使うようになるという話。(多分例外はあるかもしれないけど)例えば、日本では助数詞「つ」と「個」、あるいは動物全体に「匹」で語りかけていたのが、子どもの成長に合わせて徐々にカテゴリーを細分化し使い分けて(語りかけて)いくけど、中国では最初から?早い段階から?大人の使い分けを子どもにも使っている。「犬」の場合、日本では比較的遅くまで「わんわん」と言い、米国では「doggy」から「dog」へ比較的早く移行する。

ことばの学習のパラドックス (認知科学モノグラフ)

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心の生得性―言語・概念獲得に生得的制約は必要か (認知科学の探究)

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人が学ぶということ―認知学習論からの視点

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