鷺沢萠(めぐむ)さんの命日です
「さいはての二人」を再読。
3つの名前で呼ばれる中年男の朴さんと、日本人の母親と米兵の間に生まれながらも施設で育った20代の美亜の2人の物語。結果(今の「自分」でもいい、今の状況とでもいおうか)には必ず原因(生まれた環境やどうしようもない事情とでもいおうか)があり、人間はおろかであることに気付くことが「サイテーな馬鹿にならない」ことを教えられ、実感として感じることの“本質”・・・。再読なのに、色々なことを気付かされた。
アイデンティティの問題と歴史(朴さんは被爆2世、美亜はベトナム戦争時代に駐在した米兵との間にできた“未婚の子”)。サギサワさんの小説は、誰かにとって“重い”と感じるテーマを、そこに普通にいる人々のフツーの“物語”として描き切る。父親がいないことも、母親に施設に預けられたことも責めようともしない美亜。その美亜に「本名はどれ?」と聞かれ、首を傾げる朴さん。アメリカが“実験”で落とした原爆が原因で死に向かっていく朴さんが、美亜の名前を「美しい亜米利加」から名付けられたんだよと“発見”する。
サギサワさんが亡くなって、4年。意味のないものはない、そう思えた日。(でもサギサワさんが自殺したことに意味を持たせたくない!)
- 作者: 鷺沢萠
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/04/23
- メディア: 文庫
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