第56回第二言語習得研究会開催のお知らせ

 来週土曜(2月18日)に事務方をしている研究会が開催される。今は自宅でメール対応しかできないけれど、体力がない中当日出向けるか不安(さっさと決めないと)。
 【研究発表1】の郭さんは先日提出した修士論文研究の発表(私の研究でも韓国語翻訳で協力してくれた才女)、【研究発表2】の朱さんは先日合格した博士研究の発表。年少者教育実践に情熱を注いだ5年間の集大成となっていると思う。何故か今まで修論も投稿論文も「Iさん(私)に読んでほしい」と言われ、結構読んで、コメントしていたっけ。博士論文の発表会には行けなかったから、今回是非聞きたいと思っているのだが・・・(そうしないと、もう帰国しちゃうだろうし)。

日  時: 2月18日(土)
開始時間: 13:30 (受付開始:1:00〜)
場  所: お茶の水女子大学文教2号館302教室

【研究発表1】
◆「第二言語環境におけるある韓国人家庭の母語保持及び育成」
 郭 旻恵お茶の水女子大学大学院) 

 本研究では、第二言語環境である日本社会に滞在し、言語バイタリティの強い日本語と弱い母語の挟間で、子どもに対して二言語の両立を望んだ韓国人家庭が母語保持および育成にどのように取り組んでいったかを見るために、ある韓国人家庭を研究の協力者とし、インタビューを行った。インタビューデータを修正版グラウンデッド.セオリー・アプローチを用い分析した結果、5つのカテゴリーが抽出された。「子どもの母語と日本語の使用」、「日本語に対する父母の期待と言語実践」「日本社会への適応」「父母の一貫した母語使用」「母語保持.育成への動機付与」というカテゴリーから、協力者の家庭における日本語と母語の併用の過程と母語保持.育成への過程を見ることができた。これらの結果に基づき、第二言語環境において母語保持をする側の父母と、母語保持の主体となる子ども自身の関わり方を考察する。
【研究発表2】
◆ 「言語少数派の子どもの母語保障の方法と意義−母語の読み書き能力が不十分な子どもの場合−」
 朱桂栄お茶の水女子大学大学院) 

 来日前に母語の読み書き能力が十分に獲得できず、来日後日本語による教科学習の機会も十分に得られず、二言語とも不十分な状態に陥る言語少数派の子どもが少なくない。本研究は、上述したような中国人生徒(1名)を対象に、「教科・母語・日本語相互育成学習モデル」に基づく学習支援を取り上げた。在籍学級の「国語」の母語要約文を教材とした「母語による先行学習」における学びの実態を会話例を通して分析した。分析した結果、子どもが母語を媒介として様々な学習活動に参加できたことが分かった。また、インタビューを通して、子どもの母語による学習への態度や母国に対する意識の変容も見られた。さらに、「母語による先行学習」と後続する「日本語による先行学習」とを関連づけて見ると、前者が後者を促進している様子が見られた。これらの結果を踏まえて、母語の読み書き能力が不十分な子どもに対する母語保障の方法と意義を考察する。
【研究発表3】
◆「中国人学習者の産出した共起表現から見る語彙習得の問題」
 曹紅せん東京工業大学大学院)、仁科喜久子東京工業大学留学生センター)

 本研究は中国人学習者の語彙習得に着目し、国立国語研究所の「作文対訳データベース」を活用して分析を行うものである。まずは学習者の日本語作文と中国語訳作文を比較し、母語の正の転移及び負の転移について検証する。それから、学習者の作文と日本語母語話者の作文の比較を通して、学習者表現の特徴と傾向を見出し、問題点を提示する。最後に問題点の考察、及び教育上の応用を検討する。