無事手術も終わって

病院内のプレイルームにて

 3泊4日の入院生活にも終止符。右目の内側の眼筋の1つを切って、少し後ろ側に縫い付けて・・・見た目、右側の寄り方が緩和された印象。逆に手術を受けていない左目が寄っている感じがするぐらいだ。手術翌日には、執刀医も「思ったとおり(の位置になっている)」と。
 Nちゃんの体調もすこぶるよく、睡眠不足に陥っている私が参らないようにするのが精一杯だった。3時間睡眠が4日も続くと、朝一に会う看護師に「眠れなくて苦しい」って涙目で訴えるといううろたえぶりも(苦笑)。入院当日から夫婦で寝不足&疲労で、看護師さんに正直に乳がん宣告と夫の海外からの帰国が重なった話をし、空いているベッドに寝てもいいかと聞いてみたり。回診や食事や何やらの合間に、研究仲間で乳がんの治療を受けている友達に電話をして、私の考えていることを聞いてもらったり。視能訓練士さんに話したら、執刀医が私の噂(=セカンドオピニオンを聞かないで治療を開始しようとしている)を聞きつけて駆けつけて「私にできることがあれば何でもするから」と、T京大の専門医に「データがなくてもセカンドオピニオンができるか」を聞いてきてもらったり。かなり特殊な入院患者家族って感じですね(苦笑)。
 私たち夫婦は、夫不在のなか、子どもに今まで通りの生活をさせてやるにはどうすべきか、私の家事負担をどう減らすか、10日の朝には夫が再びベトナムに行く前に、一気に解決しておくべき(不安解消)事項を考えていった。夫は私が告知されたクリニックで今すぐにでも治療を開始してほしく、私は決断を迫られた。ただし、1点だけクリアにしたいこともあって、Nちゃんの退院後すぐに医者に会える段取りをして(無理に時間を割いてもらって)、退院後駅に着いたらNちゃんを義姉夫婦に渡して、退院に付き添ってくれた実家の母とともに、クリニックへ。医者に会うまでの時間のスタッフの対応(受付や看護師)がよく、「やっぱりここで治療しよう」と思ったのだが、本当に1点だけと思い、看護師に「こちらではセカンドオピニオンで(意見を)聞きたいと言ったら、データを出してくれますか」ということを聞いてみた。「もちろん、すぐ対応しますよ」ということだったので、それだけで(いいかって問題もありますが)「このクリニックに賭けてみよう」と決心がついた。雑誌等でがん治療の病院一覧などに載らない小さなクリニックを信用するには、医者やスタッフの対応を見極めるしかないと思ったからだ。夫の予定では、今日の医者との面談で「治療をよろしく」ってことだったんだけど、私の対応から「どうせ月曜にならないと検査等の予約もできないし、もう一度夫婦で話し合って、最終的には患者のあなたが決断しなさいね」と念押しされて帰ってきた。2度会っても、その度に「治療先と治療法はあなたが選ぶんですよ」という一見突き放したような医者の言葉に、夫は多少変な印象を受けていたようだが、それはそれで、と思う。もちろん、寝耳に水ごとくがん宣告され、知識のない状態で「何が自分にとっていい治療法か」というのを早急に選ぶという作業は、極めて難しいこと。
 医者の面談(カウンセリング)の前に看護師から、化学療法(抗がん剤)の副作用のカバー(かつら・ウィッグ、眉のタトゥーを紹介するという話)、全摘の場合の乳房再建の仕方など、知りたいであろうことを色々説明してくれた。化学療法が始まったら、看護師の携帯電話番号を教えてくれるとも話してくれて、患部の治療だけでなく、精神的にも患者や患者家族を最後までサポートするという姿勢。待合室においてある医者の経歴や業績、そして最近どこかで発表したパワポ資料・・・。パワポには「ケア」の大切さが書かれていた。患部だけの治療ではダメだということ。
 帰宅後(退院→クリニック→自宅)、子どもらを預けている2階に行き、義母や義姉夫婦に色々説明して「うん、いいんじゃないか」ってこと。看護師をしている義姉も知名度がある“名医”がいい医者だとは思っていなく、がんという病気の性質上、「ケア」が大切であり、それが受けられそうなクリニックだと、みんなが納得してくれた。何よりも近所であるということ(国立がんセンターもタクシー・バスで20〜30分なんだけど、私は車が苦手で)。3世帯住居でもあり、夫不在のなか、私が体調悪い時に頼るのは義姉夫婦になるため、私自身だけが納得していてもダメだし、みんなにも安心してもらいたい。ただし、他に転移しているのかそれが不安であり、できるならMRIなど取れるデータを取ってもらえたら、と意見を。ステージII、30代。医者もいくつかの選択肢があることを説明してくれ、「自分だったら化学療法を先に、と考えている」と。他で意見を聞いても、多分何がいいか私には選べないと思うので、きちんと説明を受けながら医者のいうようにやっていけたらと思っている。1週間の間に、2度も無理に時間を割いてくれたクリニック&医者(1時間×2回)。本当にありがたい。
 夕方、実家の母の厚意(経済的援助)で電子レンジ調理器を買いに行った。車で来た夫と別れ、直前に受付を済ませていた美容院に戻り、髪をさっぱりさせてきた。帰宅したら、今までの手作り棚が改造され、今まで使っていた電子レンジがあった場所に、新しい家電が堂々と鎮座していた。また、私はかなりの片付け下手なのだが、夫が家の中をかなりきれいにしてくれていた。Nちゃんが生まれる前にも後にもやっていなかった、台所の床掃除もしていてくれ、きれいな床に戻っていた(苦笑)。ガスレンジも、ガスのフードも、きれいに。切れていた電気も、ついているし(苦笑)。
 明日は、夫とS吾が映画を見に行く。今回の帰国は、Nちゃんの手術に合わせ、今度の帰国は、私の手術に合わせられるはず。3ヶ月に1度の帰国に、S吾とのふれあいが短くなるのは申し訳ないけど、これが私たち家族の今の状況だから仕方がない。